成田の部屋

 1歳の子どもをもつ夫婦の賃貸住宅である。結婚した若い夫婦は学生時代からの家具を持ち寄り、千葉のこの住宅に移り住んだ。子どもが生まれ、ほどなくして改装をしたいとの依頼を受ける。持ち物はどんどんと増え、子どもはハイハイを始めようとしていた。日増しに活発になっていく子どもにとって、いろんな物が散在するその住宅は危なげであった。
 賃貸の場合、生活空間を用意するには、不動産屋で立地と広さをにらんで部屋を探し、家具屋でその時必要な家具をそろえて部屋に並べる。不動産屋に並んでいる部屋は全国各地で流通するために適度に機能的で画一的な形と仕上げの空間であり、家具屋に並んでいる家具は色の多様さを除いては適度に機能的な画一的な家具である。その部屋は大概ビニルクロスとフローリングで囲まれた小部屋の集まりで、まちまちな家具が置かれた空間であるが、それは生活を支えるに十分な豊かな空間だろうか。
 ごく一般的な住人にとって、特異な部屋に入居するのは物件を選ぶ労力と払う家賃からして容易ではないし、家具と持ち物の雰囲気を徹底した美意識で統一するのも容易ではない。だからといって、画一的な部屋と家具の空間にしか住まうことを強いられなければいけないだろうか。

 一方、夫婦は結婚した当初は共働きで、子どもができてからは母親が仕事を休んで育児をするようになり、家にいる時間が増えた。子どもは小さな布団で寝ていたと思ったら、すぐにハイハイしだし、立ち上がるようになる。今度はすぐに立って歩き出すだろう。母親は活発な子どもから目を離すことができないし、しばらくの間は子どもを囲っておいて、危ない物にふれないようにしたい。日々成長する子どもと育てるの生活を支える空間をつくれないものか。

 そこでこの部屋では、建築より可変的で、家具よりしっかりとした設え「Habitable
Furnichure」を計画した。それはステージやデッキ、収納棚や植栽棚、日射調整ルーバー、窓枠、カウンター等であって、ほとんどが住人がDIYで扱える30mm×40mmの木角材で組み立てられてている。賃貸の部屋なので、全ての設えは床や壁に打ち付けず、互いに組み合わさって自立している。

 ステージは子どものための場所であり、小さい間は低い置き棚で囲い、大きくなったら棚を外して家族の床座リビングになる。バルコニにも同じ高さの床が伸びてデッキになり、天気の良い日に過ごす場所になる。ステージには格子に組まれた棚が面していて、家族の持ち物が飾られる。


格子棚はバルコニにもあって、こちらは植物を育てるための台になる。西向きの大きな窓に沿って窓枠がつき、これに日射調整ルーバー、カーテンレールワイヤー、室内干しのためのハンガーパイプを組み込んだ。食卓は同じ角材で作ったルーバー状のテーブルと、これに沿って角材を集成材にしたカウンターを設えた。テーブルトップのアクリルが朝日を反射して、室内に光をもたらす。

 細い角材と細やかな光で満たされるこの部屋が、親子の穏やかな生活を支えられることを願っている。